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How did games and psychology come together? “Brain functions common to humans seen in the game UX community and their application to game design” [CEDEC 2024]

Published on 2024-09-02
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 近年,ゲームデザイン関連で心理学用語が使われるようになっている。ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2024」でも,その経緯についての講演「ゲームUXコミュニティに見る『人類共通の脳機能』とゲームデザインへの応用」が行われていた。

 本講演では,ゲームと心理学がいかにして接近したのか。また,UXを高めるための社内での意志統一の大切さなどが語られた。

ゲームと心理学はいかにして接近したのか。「ゲームUXコミュニティに見る人類共通の脳機能とゲームデザインへの応用」[CEDEC 2024]

登壇者は,山根信二氏(NPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)理事/東京国際工科専門職大学 教員)
ゲームと心理学はいかにして接近したのか。「ゲームUXコミュニティに見る人類共通の脳機能とゲームデザインへの応用」[CEDEC 2024]


ゲームと心理学はいかにして接近したのか


 ゲームデザインに心理学用語が使われるようになったのは,「欧米のゲーム教科書」からのムーブメントであるという。
 心理学を学ばずともゲームは作れるが,作品にさまざまなフィーチャーを導入する際,心理学をベースとして「人間はそのように進化したから」と明確に根拠を説明できるのが理由である,と山根氏は語る。

 例えばメニューの長さを決めるにしても,従来は個人的な経験やさじ加減に頼っていたものが,心理学の知見があれば「人間はここまでの長さしか覚えられないから,この長さにした」と明快に説明できる。
 人から人へ技能やノウハウを継承するとき,前述したような個人的経験などでは伝わるものも伝わらない。また,伝える側と聞く側の双方にリテラシーがあることも前提となってしまう。作品がヒットした理由についても,アーケードゲーム畑の人がモバイルゲームしか知らない人に伝えようとしても,双方が持つ知識や用語は異なるので伝わりにくい。

 しかし,“心理学用語を共通言語とすれば”そうした世代間断絶が起こりにくい。近年は大学でもゲームデザイン講座が開かれるが,それが可能なのも世代を越えて説明できる言葉が設定されたからなのだ。

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 心理学用語がゲーム業界に波及したきっかけは,ゲームメーカー「エレクトロニック・アーツ」(EA)にあると山根氏は述べる。

 まずは前段階での2つの出来事として,「最後の授業」で知られるカーネギーメロン大学の終身教授ランディ・パウシュ氏が,長期研究休暇を取ってEAで働き,その経験を「An Academic's Field Guide to Electronic Arts」という論文にまとめた。さらに2007年,EAが創業者の全員が医学博士や大学研究助手であるBiowareを買収し,大学の教育プログラムを知る博士がEAの副社長となった。これらが発端にあるという。

ゲームと心理学はいかにして接近したのか。「ゲームUXコミュニティに見る人類共通の脳機能とゲームデザインへの応用」[CEDEC 2024]

 人のモチベーションを研究するにはゲームがよい題材になるということで,開発者向けカンファレンス「Game Developers Conference」(GDC)では,心理学研究シンクタンクからの登壇が連続した。

 また「シムシティ」「シムアース」などシミュレーションゲームで知られるウィル・ライト氏が,ゲームデザインに心理学博士を参加させた新作「Spore」についての発表を毎年行い,ほかの学者も同作を題材にした論文で追従した。ほかにも「Left 4 Dead」ではゲームデザインのために実験心理学者が雇われ,体験に対する仮説が立てられ,装置が作られ,検証を進めるという形で「実験するようにゲームデザインをしていく」(山根氏)など,ゲームと心理学の接近が進んでいった。

 「Left 4 Dead」の開発においては,体験者の手の汗から心理的刺激を測定する機械を作成するなど,ゲーム開発ではユニークな取り組みが進められた。その記録を公開する姿勢にも研究を思わせるものがある。

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 今や大学でゲームデザイン講座が開かれ,ユーザーエクスペリエンス(UX)実験という新たな視点も加わり,ゲームデザインの教科書も作られるようになってきた。だからといって,ゲーム会社がいきなり社外シンクタンクを使ったとしても,デメリットが発生しかねないという。

 ゲームデザイナーとは往々にして,自身のやりたいように仕事を進める人種であり,作品の内容に口出しされることを嫌う。しかも相手が社外シンクタンクとなればなおさらで,結果としてゲームデザイナーは口出しされるきっかけ(テストプレイなど)を後回しにするようになる。実際,シンクタンクが意見を出しても,「修正するのは間に合わないからそのまま発売する」といったケースが見られてきたそうだ。

 また,社内にUXディレクターを雇うにしても課題がある。UXを高めていくには会社全体の意志統一が必要であるが,UXディレクターというのは「これまでのゲーム会社にいなかった職種」であるがゆえ,先輩などのつながりから教えを学ぶことができない……といった問題だ。

 加えて心理学用語を使うにしても,誤った学説に引っかかってしまう可能性もあると山根氏は指摘する。これは「男女で脳が違う」「右脳と左脳の働きが違う」といった説が最たるもので,GDCでは報酬を考えるうえでドーパミン説を捨てるべきであるとする論文も出ているなど,誤った学説を訂正していく取り組みも行われているそうだ。

 だが心理学でもUXでも,欧米のゲーム業界が乗り越えてきた背景を踏まえないと,さらなる成功は見込めない。ゲーム作りにおける新たな概念とどう向き合うかも,近年の必要なステップなのだろう。

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